終電

その日、仕事で遅くなり、私は終電に乗っていた。
田舎町に向かう下り電車で、乗客は少なかった。
私の降りる終点の駅まで、あと30分。
私のいる車両に乗っているのは、年齢不詳のカップルが1組と、缶チューハイを持ったヤバそうなおじさんだけだった。
「あっ……ひっ……」
さっきから、カップルの女の方が、変な声を出している。



どうも様子がおかしい。
私は気づかれないように、カップルを盗み見た。
2人は密着していた。
女のボストンバッグで隠しているが、男の手の位置が、あやしい。
女の足が、切なげに動き、ときどきビクッとする。
どうやら、変なコトをしているらしい。
電車の中でよくやるなぁと思い、目をそらす。
「んっ……あ……あっ、あっ、あんっ!」
カップルの女が、けっこう大きな声を出した。
見ると、女は、男にしがみつき、肩で息をしていた。
イッたのかもしれない。
うわぁ……と思っていると、カップルは、キスをしはじめた。
しかも濃厚なやつ。
どんどん激しくなって、なにやら音もする。
男が女の胸を揉みはじめると、女はまあまあの声量で喘いだ。
なんか、ヤバくないか……
そう思うのだが、車両を移動するのも気が引けた。
今立ち上がったら、絶対目立つ。
カップルの行為に気づいて移動したと思われるのも、なんだか恥ずかしい気がした。
そうだ、寝たふりをしよう。
あと20分ちょっとで、降りるんだから……

「いいじゃん、大丈夫だよ」
「えーっ、ダメだって……マジで?」
カップルが不穏な会話をしている。
なにをする気だろう……
「今入れたいっ」
「もー、エッチなんだからぁ」
えっ……まさか、本当に!?
私は寝たふりをしながら、また、カップルを盗み見た。
「でも、どうやるの?」
「ちょっとまって……」
男がズボンのチャックを開けると、肉の色をした棒状のものがピョコンと飛び出した。
うわぁ……見えてしまった。本当に出した。というか、本当にここでやる気!?
「はい、俺の上に乗って」
「わーっ、電車なのに出しちゃってる、エッチー」
2人はひそひそ声で話しているつもりらしいが、よーく聞こえる。
缶チューハイのおじさんだって、気づいているはずだ──私はもうひとりの乗客を見た。
缶チューハイのおじさんは、私の方を見ていた。目が合ってしまった気がして、私は慌てて顔を伏せた。
駅まで、あと15分くらい。寝たふりをしてやりすごそう。

しかし、カップルの行為はどんどんエスカレートしていった。
「あっ、ん、ダメぇっ……声出ちゃう……っ!」
「いいよ、みんなに見せつけちゃおうよ……ああ、もう後ろから入れよう」
男は、一度女を下ろして立ち上がり、女を座席に向かって立たせ、背後に回ると、女を座席に押し付けた。
「いくよ」
「あん、やぁっ、そんなの恥ずか……あああんっ!」
カップルは、バックでガンガンやりはじめた。
信じられない。
もはや、隠していない。

駅まで、まだあと10分くらいある。
ちょっとこれは、逃げてもいいかもしれない。
私は車両を移動することに決めた。
するとその時、私の目の前に人が立った。
「え……?」
顔を上げると、缶チューハイのおじさんだった。
おじさんは、私が身構える間も無く、襲いかかってきた。
両腕をつかまれ、ひっくり返され、座席に押し付けられ、スカートを巻くられ、パンツを引き下ろされ、いきなり、固くて生温かいモノを突き刺されたのだ。
「ああっ────!」



グチュッ、グチュッと音がする。
すごく怖いし、すごく嫌なのに、すごく気持ち良くて、頭がおかしくなりそうだった。
「お嬢ちゃん、思った通り、ぐっしょり濡らしてたなぁ、ヒヒヒ」
缶チューハイのおじさんがガンガン突きながら言った。
「んっ……ひっ……ひゃめて……ひゃめてくらはい……っ」
「あっちのカップルがやってるの、ずっと見てただろ……やりたかったんだろ?」
「んっ……ちが……あっ……ひぃいいん────っ!」

終点の駅に着いた。
私を見て、ヒソヒソと話しながら、カップルが降りていく。
缶チューハイのおじさんは、自分が果てると、ささっといなくなった。
乗客が残っていないか確認するために走ってきた車掌が、ぐったりしている私に声をかけてきた。
「お客さん、終点ですよ」
「あ……はい……すみません……」
私は重い体を引きずるようにして、電車の外に出た。
ゆっくり歩き出すと、股の間から、生温かい液体がこぼれ出た。

おわり