視姦

ただ見られているだけなのに、どうしてこんなに感じちゃうの!?
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《読了時間の目安:5分》

わたしは今、学生をしながら、自由に使えるお金を稼ぐため、ハンバーガーショップでバイトをしている。
貴重な時間をさいて働くのは面倒だけど、わりと若いバイトが多くて楽しい職場なのが救いだ。
──なんてことを考えていたら、お客さんが来た。
「いらっしゃいませー!」
わたしの仕事は、主に接客業務である。
注文を聞いたり、お会計をしたり、商品をわたしたり、運んだり。
「コーヒー」
客の男が言った。
全身黒い服で、なんだかあやしい感じ──と、一瞬思ったが、わたしはすぐに頭を切り替え、マニュアル通りの言葉を発し、会計を済ませ、商品を乗せたトレーを差し出した。
変わった客なんてたくさんいるし、いちいち気にしていたらきりがないのだ。
──ん?
少しの間があった。
見ると、男がカウンターの向こうに立ったまま、わたしの胸を凝視している。
(え……)
しかし次の瞬間、男はコーヒーの乗ったトレーを取り、さっと向きを変え、客席に向かっていった。
たまたま目線が下がっていただけだったのかもしれない。
たとえ、本当に見ていたとしても、男が女の胸をチラ見するのは……まあ、よくある事だ。
忙しくなってきたのもあり、わたしはすぐにその事を忘れ、仕事に奔走した。
しばらくして、やっとピークの時間帯が終わった。
客もまばらになってきたので、わたしは掃除に行こうかと、客席を見た。
すると、あの男がこちらを見ていた。
まだいたのか──わたしはそんな事を考えながら布巾を持ち、カウンターを出た。
空いている席のテーブルとイスを拭き、きちんと並べ直していく。
視線を感じ、ふと見ると、あの男がまだ、わたしを見ていた。
わたしと目が合っても、まったく目をそらそうとしない。
男はただ、こっちを見ているだけで、用があるわけでもなさそうだった。
わたしは小さく会釈をしてから目をそらし、作業に戻った。
(なんだろ、知ってる人じゃないし……ちょっと変な人……?)
最後のテーブルを拭き終えた。
(さて、と……)
わたしは少し覚悟をして振り返った。
(うっ……)
男はまだ、こちらを見ていた。
ほおづえをつき、紺色のタイトスカートから伸びるわたしの足を眺めているように見える。
隠す素振りも見せず、穏やかな表情で思いっきり見ているのが異様だった。
(なによ、あいつ……)
わたしは唇を噛み、男の方を見ないようにしながら、カウンターに向かった。
男の近くを通るのは避けたかったが、あえて、真っすぐに進んだ。
回り道をすると、自分が男を意識している事が伝わってしまうような気がしたからだ。
目の端に映る男は、相変わらずこっちを見ていた。
男に近づくにつれ、緊張が高まっていく。
もしかすると、横を通る瞬間に、足やお尻をさわられるかもしれない。
そのまま強引にスカートをめくられて、乱暴にストッキングを破かれて……そして、パンティの中に指を入れられちゃったりして──ああっ、そんなことになったら、どうしよう!
しかし、わたしの心配をよそに、男はなにもしてこなかった。
無事、カウンターについたわたしは、どっと疲れてしまい、大きく息を吐いた。
(わたしったら……バカみたい。そんな事、あるわけないじゃない)
しかしその後も、男はわたしを見続けていた。
他のバイトの子に話してみたのだが、「そうですかぁ?」という素っ気ない返事が返ってくるだけだった。
──わたしの自意識過剰なのだろうか。
まあ確かに、直接危害を加えられたわけではないのだ。
変な客が来る事なんてよくあることだし、気にしない方がいいのかもしれない。
それからわたしは、気持ちを切り替え、仕事に集中した。
とにかく無視、気にしないという姿勢を貫いたのである。

しかし、そんな事が何日も続くと、さすがに無視できなくなってくる。
その後、男はわたしがバイトに入る日は、必ず店に来たのだ。
他のバイト仲間に話してみたが、男が何度も店に来ている事も知らず、ピンと来ないようだった。
しつこく聞くと、わたしの方がおかしいと思われてしまいそうだった。
男はただ見ているだけで、わたしに指一本、触れていないのだ。
わたしは理解者を得ることもできず、ただ、男の視線に耐えるしかなかった。
今日も男は店に来ていた。
相変わらず、わたしに遠慮のない視線を向けてくる。
(もうっ、一体なんなのよ。今日こそは……!)
わたしは抵抗するつもりで、男に強い視線をぶつけた。
しかし、男はびくともしなかった。
それどころか、笑みまで浮かべている。
わたしは男と見つめ合う事に耐えられなくなり、目をそらした。
(なによ、アイツ!)
わたしに恨みでもあるのだろうか?
そんな覚えはないんだけど──
顔を上げると、男はわたしの胸を見ていた。
男の瞳が動いている。
乳房のふくらみをなぞるように……そして、乳首の先を見つめて──

男は目を細め、少し舌を出すと、ゆっくりと唇をなめた。
「うっ……」
わたしは思わず、小さな声を漏らしていた。
(やだ、わたしったら……やだっ……)
男の目や、舌の動きを見ていたら、男に乳首をなめられたような錯覚におちいってしまったのだ。
「はぁ……はぁ……」
呼吸が荒い。
体が熱く、下半身に違和感まである。
ああ、見られていただけなのに、どうしてこんな……
男はわたしの反応を楽しんでいるようだった。
今は、舌を出し、チロチロと動かして見せている。
わたしの頭の中は、乳首をなめられているイメージでいっぱいになってしまった。
(いやっ……もうやめて……)
しかし、そう思いながらも、わたしは男から目をそらすことができなかった。
そんなわたしを見て、男はニヤリと笑うと、左手を軽くにぎり、その中に、右手の人差し指を出し入れする動作をはじめた。
突き刺しては抜き、突き刺しては抜き……それを何度もくり返している。
(ああっ、そんなことまでっ……)
男のあの指が、まるで自分の中に入ってきているような感覚におそわれる。
やがて指のイメージは、あの男の、太く、固く、限界まで張りつめたモノに変わっていった。
男に組みしかれ、ドクンドクンと脈打つ肉棒に激しく突き上げられることを想像し、わたしは震えた。
思わず、自分の体を抱きしめる。
やがて、立っているのも難しくなり、わたしはカウンターに手をつき、崩れ落ちそうな体を支えた。
(もうダメ……わたし……)
「どうしたの、大丈夫?」
店の責任者であるマネージャーが声をかけてきた。
「あっ、あの、いえ……平気です……」
「いや、すごく調子悪そうだよ。 今日は混んでないし、1時間早いけど、帰ったら? 無理しない方がいいよ」
「あ……えっと、それじゃあ…………すみません。そうします」
わたしはお言葉に甘え、帰らせてもらうことにした。
もう、おかしくなってしまいそうだったのだ。

制服から私服に着替え、わたしが従業員用の出口から出ると、そこにはあの男が待っていた。
なんとなく、そうなるようなきがしていたわたしは、驚かなかった。
というより、男がいてくれたことがうれしかった。
もし男がいなかったら──とても寂しい、空しい気持ちになっていたに違いない。
「行こうか」
男が言った。
わたしがうなずくと、男が歩き出した。
わたしも、それについて歩き出す。
歩くと、ぐっしょりと濡れた秘部がヌルヌルしているのがわかった。

おわり