壁越しの恋

部屋の壁からギンギンのおち○ちんが生えてきた!?
《読了時間の目安:12分》

天気のいい、日曜日の午後のことだった。
ドスッ!
バリバリッ!
突然、ものすごい音がした。
そして、悲鳴のような、男の叫び声。
アパートの自室でくつろいでいた雪子は驚き、反射的に音のした方を見た。
「えっ──!?」
“それ”を見て、雪子は息をのんだ。
なんと、部屋の壁に、男性のペ○スが生えていたのだ。
「なっ、な……ななっ、なんで!?」
雪子はその場に固まったまま、それを凝視した。
しかし、冷静に考えると、壁からペ○スが生えるわけがない。
(ということは……)
雪子は立ち上がり、恐る恐る壁のペ○スに近づいた。
(やっぱり……)
壁にそって置いてあるベッドの上に、壊れた壁のかけらが落ちている。
つまり、信じられないことだが、隣の部屋からペ○スが壁を突き破って雪子の部屋に出てきているのだ。
雪子はベッドの上を掃除しつつ、壁のペ○スを観察した。
ギンギンに勃起して、脈打つ肉棒。
どう見ても、本物のペ○スだ。
すると、隣の部屋から男のうめき声が聞こえてきた。
壁を叩くような音もする。
雪子は息をひそめ、聞き耳を立てた。
どうやら、このペ○スの持ち主である男性は、ペ○スが抜けなくなって困っているらしかった。
おそらく、隣の部屋の住人だろう。
少し顔を見たことがあるくらいで、ほとんど見ず知らずの男だったが、なんだかかわいそうになり、雪子は男に協力することにした。
こんなことになってしまった男の気持ちを考えると、不思議と恐怖や嫌悪感は感じなかったのだ。
雪子は、壁をコンコンとノックしてから、声をかけた。
「あのーっ」
すると、少し間を置いて、男の声が返ってきた。
「は、はいぃ……す、すいません、ちょっとトラブルがあったもので……うるさかったですよね……失礼しました……」
どうやら、雪子の部屋にペ○スが出ているとは思っていないらしい。
雪子は言った。
「いや、そうじゃなくて……あのですね、そちらの……その……大事なトコロと言いましょうか……棒状のモノがですね、こちらに飛び出してきてる感じなんですけど……」
「なっ……!?」
男は事態を把握するのに時間がかかったのか、しばらく沈黙していたが、やがて、ものすごい勢いで言った。
「すっ、すすす、すいませんすいませんっ、そんなことになっているとはっ……たいへんなご迷惑を……わっ、悪気は全くないんですっ! 転んだ拍子にこうなってしまっただけで……そ、そうだ、あのっ、いろいろっ、修理とかちゃんとしますからっ、その……責任は取りますんで、安心してくださいっ。ただ……」
「ただ?」
「まずは、この状態をなんとかしなきゃいけないんですけど……それが……」
「あ……もしかして、抜けないんですか?」
雪子が聞くと、男は困った様子で答えた。
「ええ、そうなんです……ぎっちりハマっちゃったみたいで……あの、ちなみに……どのくらいそっちに出てます? って……あっ、ああっ、女性にこんなこと聞くの失礼ですよねっ、重ね重ねすいませんっ、忘れてくださいっ、ホントすいませんっ」
「いえいえ、全然いいですよ。こんな状況なんですから……えっと……10cmくらいですかね……や、もうちょっとあるかな?」
「うわっ、ホントですか? それじゃあ、ほとんど根元まで全部出ちゃってますよ……壁薄すぎ……」
「言われてみれば、そうですね。転んだくらいで壊れるとかありえないし……だいたい、こんな風に会話できてるのもおかしいです……あとで大家さんに聞いてみないと。……って、今はそれどころじゃないですけど」
「ははは……とにかく、なんとか抜くしかないですね。すいません、ご迷惑おかけします」
「いえ、こっちは大丈夫ですから……だけど、よく考えたら、身動きとれないのって危険ですよね。水も飲めないじゃないですか。部屋には誰も……?」
「ええ、誰もいません……しかも、ドアには鍵がかかってますから、誰も入れません」
「まずいですよ、それ。通報した方がいいんじゃ……」
雪子がそう言うと、男はあわてて制止した。
「だっ、ダメです、それは! 大騒ぎになっちゃいますよ。この辺でウワサになっちゃうだろうし、恥ずかしすぎます……」
「でも……」
「大丈夫です、策はありますから」
「策……?」
「ええ。今はその……大きい状態なんで、これが小さくなれば……簡単に抜けるはずです」
「あぁーっ、なるほど! ですよね! なんだ、それならすぐに抜けますよ」
「ええ、そのはずです。なので……すいませんが、しばらくお待ちください……」

しかし、数分後。
ペ○スは相変わらずの状態だった。
「あのぉ……大丈夫ですか?」
心配になった雪子は、壁の向こうの男に声をかけた。
「はい、大丈夫です……ホントすいません」
男が申し訳なさそうに答える。
「どうして小さくならないんでしょうねぇ……」
雪子が首を傾げて言うと、男が言った。
「今必死に鎮めようとしてるんですけど……どうも、その……女性に見られてると思うと興奮してしまうみたいで……あ、いや、けっ、決して変な意味ではなく、本能というか、あの、つまり、いや……なんというか……」
男はしどろもどろになっていたが、雪子は納得し、あっけらかんとした口調で言った。
「なんだ、早く言ってくれればよかったのに。そういうことならわたし、しばらく出てますよ。それならきっと……」
「いやっ、そんなの悪いです、たぶん、もう少し待てば……」
「いえ、気にしないでください。ついでに買い物とかもできるし……すぐに出かけますね」
すると、男があわてて雪子を呼び止めた。
「待ってください、お願いしますっ、行かないでくださいっ!」
「へ?」
男の悲壮な声に、雪子は動きを止める。
男は弱々しい声で言った。
「その……無理にとは言いませんが……いてくれませんでしょうか……誰もいなくなると思うと、心細いというか……なにかあったらって……巻き込んだ上に、わがまままで言ってすいませんっ……」
「そうですか……わかりました。そういうことなら、出かけません。安心してください」
雪子は苦笑を浮かべながら返事をした。
なんだか、この情けない男を愛おしく思いはじめていたのだ。
「すいません……ありがとうございます……」
「ただし、本当に危険になったら通報しますからね。きつくなってきたら、早めに言ってくださいね」
しかし、男の努力も虚しく、それからさらに数分たってもペ○スの状態は変わらなかった。
心細いだなんて情けないことを言うわりに、ペ○スの方は元気いっぱいなのだ。
雪子は男の体調を心配し、声をかけた。
「どうです? 体の方は大丈夫ですか?」
「それは……なんとか……ずっと立ってるので、少し疲れてきましたけど……」
「うわぁ、それは疲れますよ! やっぱり通報した方が……」
「だっ、大丈夫ですっ、体力には自信がありますから!」
「でも……」
雪子はどうにか助けになりたいと思う一心で、考えを口にした。
「なにか他に、ソレを小さくする“方法”とかってないんですかね?」
すると男は、ぼそぼそと言った。
「まぁ、ないこともないですけど……」
「えっ、あるんですかっ? どんな方法なんです?」
「んー……まあ……その……出しちゃえば、小さくなるっていうか……」
「あ……」
雪子も子供ではない。
その意味はすぐに理解できた。
つまり、射精してしまえば小さくなるということだ。
雪子が口ごもると、男はあわてたように言った。
「いやっ、もっ、もちろんそんなことしませんのでっ……今のは気にしないでください! というか、こんな状態じゃ、どうせできないし……なんて、はははは」
男は自嘲するように笑った。
確かに、ペ○ス以外は壁の向こうにあるわけだから、手などを使うことはできない。
物理的な刺激なしに、妄想だけで射精するのは難しいだろう。
雪子は考え込んでいたが、やがて、決心したように言った。
「あの……わたしが、お手伝いします!」

「じゃあ、触りますね……」
雪子はそう言うと、壁から突き出したペ○スをそっと握った。
「はうっ……やっ、やっぱり、こんなこと申し訳ないですっ……」
男が情けない声を出すと、雪子は諭すように言った。
「それは何度も聞きました。緊急事態なんですから気にしないでください。わたしは平気ですから」
「はぁ……」
「そんなに緊張してると、イケないんじゃないですか?」
「そ、そうですね……がんばりますっ」
「ふふ、その意気ですよ。あ……痛くないですか?」
雪子は男のペ○スをこすりながら聞いた。
「はい、それは、大丈夫です……欲を言えば、もっと強く握ってもらってもいいかなって……あ、いや、すいませんっ」
「いえいえ、そういうの、どんどん言ってください。意味のないことしてたら、わたしも切ないですから」
「そうですね、はい……腹を決めます」
「じゃあ、強くしてみますね」
雪子は男のペ○スを握る力を強くした。
男のペ○スは、それに反応するようにドクンドクンと脈打ち、さらに大きくなったようだった。
(すごい……もっと大きくなっちゃった……)
雪子は力のみなぎるペ○スに驚きながら、一生懸命手を動かした。
しかし──いつまでたっても、男は射精に至らなかった。
「すいません……もうちょっとって感じなんですけど……」
「いえ、こちらこそすいません……わたしのやり方がダメなんですね、きっと」
雪子が申し訳なさそうに言うと、男は必死にそれを否定した。
「いえっ、そんなことは絶対にありませんっ、すごく気持ちいいしっ……あっ、いや、その、ホントに、もうちょっとって感じなんです……」
確かに、男のペ○スは爆発寸前といった様子で、その先端からは我慢汁が漏れ出していた。
雪子はそんな男のペ○スを熱っぽい視線で見つめると、思い切って言った。
「あの……口でしてもいいですか? あっ、嫌ならいいんですけど、そのっ、もし、よかったら……」
「えっ、いやっ、あっ、嫌ではないです……じゃなくてっ、さすがにそれは……悪いです、そんなことまで、させられませんっ」
「だけど……その方がイキやすいかなって……」
「それは、そうかもしれませんけど……そんなの、お願いできませんって……」
「嫌では……ないんですよね?」
「そりゃ、まぁ……」
「じゃあ、させてください……」
雪子はそう言うと、返事を待たず、男のペ○スに舌を這わせた。
根元から先端に向かって、ゆっくりとなめ上げる。
「はわぁあっ……マジですか……」
男が震える声でつぶやく。

(あぁっ……すごい……こんなのはじめて……おち○ちんおいしい……)
(どうしよう……ギンギンのおち○ちん見てたら変な気分になっちゃったみたい……)
(しっかりしなきゃ……これは、人助けのためなんだから……)
(あぁ……大きくてガチガチのおち○ちん……こんなに固いから、壁に穴があいちゃったのかも……)
雪子はそんなことを考えながら、夢中でペ○スにしゃぶりついていた。
そして、どんどん気分が陶酔していった雪子は、男から見えていないのをいいことに、服をはだけ、自分の手で胸や秘部の感じやすい部分をいじりはじめていた。
(やばい……変な声出ちゃいそう……)
(こんなことしちゃうなんて……わたし……おかしくなっちゃってる……)
(ああっ、気持ちいい……もっと欲しい……どうしよう……おち○ちん欲しくなってきちゃったよぉ……)
雪子の頭の中が、挿入のイメージでいっぱいになっていく。
するとその時、呼吸を荒くした男が言った。
「はぁっ……はぁっ……あのっ、もう少しでイケそうですっ……もっと激しくされたら、もうっ……」
それを聞くと、雪子は思わず叫んでいた。
「ダメっ……まだイッちゃダメですぅっ!」
「……へ?」
「あっ……あのっ……やだっ……ごめんなさいっ、わたし……!」
雪子は一瞬で我に返り、顔を真っ赤にして口を押さえた。
「あ……えっと……大丈夫……?」
男が心配そうに言う。
「はい……あの……わたし……あのっ……」
雪子はなんと言っていいかわからず、口ごもった。
すると、男が言った。
「ごめん。やっぱり、こんなことやめよう。落ち着いたらでいいから、通報してもらえるかな」
「えっ?」
「君にこんなひどいことさせるなんて、間違ってた。そんなに混乱して……本当はつらかったんだよね。本当にごめん」
男がそう言うと、雪子はあわてて否定した。
「そんなことっ、それは違いますっ!」
「でも……」
「本当に違うんですっ。わたしは、ただ、変な気持ちになっちゃっただけで……あの……つまり……」
男は黙って、雪子が話すのを待ってくれている。
雪子は意を決して、真実を口にした。
「すごく恥ずかしいんですけど……い、入れて欲しくなっちゃったんですっ。おち○ちんを……」
「……へっ!?」
男が驚きの声を上げる。
「だっ、だから、まだイッて欲しくなくて……思わず……」
雪子はそう言うと、唇をかんだ。
「それで、あんなことを言ったわけか……はは……」
男は拍子抜けしたように言い、力の抜けた声で笑った。
「おかしいですよね……」
「いや、そんなことないよ……なんて言うか、すごくホッとしたっていうか……うれしくて」
「ホントですか?」
「うん、入れたかったなんて……それ聞いただけで興奮して……イッちゃいそう」
「あっ、えっ、まって……まだダメ……じゃなくて、その……」
雪子があわてると、男は笑った。
「あははっ」
「もうっ……笑わないでください……」
「ごめんごめん、なんか、かわいくてさ……」
男がそう言ったのを聞いて、雪子は胸が苦しくなった。
様々な気持ちが交錯して、もう、どうしていいかわからない。
すると男が言った。
「俺も……正直に言うと、入れたいと思ってたよ。手も口も、すごく気持ちよかったし……こんなことになって逆にラッキーだったかも……なんて思っちゃってた。だけど、助けてもらってるのにそんなこと考えるなんて、最低だなって……必死に、冷静になろうとしてた」
「……ホントに?」
「うん。今は、君をお茶にでも誘いたい気分……いや、それより先に抱きしめたいかな。……なんて、あはっ、図々しいよね。君は助けてくれてるだけなのに……」
「そんなこと……うれしいです」
雪子はかすれた声で言った。
頭の中がピンク色に染まっていく。
「ホントに!? やばい……俺もすごくうれしい……今すぐ抱きしめたい……けど……」
男は一呼吸置くと、沈んだ声で言った。
「情けないことに、まずはこれをどうにかしなきゃいけないんだよな……」
男のペ○スは相変わらずの状態なのだ。
それを聞くと、雪子は少し、冷静さを取り戻した。
「そうですよね。もうちょっとだったのに、中断しちゃってすいませんでした。続き、しましょう」
「いや、君はなにも悪くないんだから、謝る必要なんか……あうっ」
男の返事を待たずに、雪子はペ○スをくわえていた。
雪子が吸い付き、舌を這わせると、面白いようにペ○スは反応する。
ビクンビクンと脈打ち、みるみるうちに固さを増していった。
「ああっ、すごい……すごく……いいよ……」
男の途切れる声は甘い蜜のように、雪子を幸せにし、夢中にさせる。
しばらくして、雪子はたまらなくなり、言った。
「やっぱりダメ……どうしても……我慢できない……入れたいの……ううっ……入れたいよぉ……うわぁーん」
気持ちがつのりすぎて、雪子は泣いていた。
これほどまでに求める気持ちになったのははじめてだった。
「ね、泣かないで……俺も入れたいよ。入れよう?」
男が言った。
「いいの……?」
「もちろんだよ。さっきも言ったけど、俺だってずっと入れたかったんだよ? まぁ、こんな状態だからアレだけど……」

雪子は壁のペ○スに背を向け、ベッドの上に四つん這いになった。
ペ○スの位置からして、バックの体位で入れるしかなかったのだ。
「じゃあ、いきます……」
雪子は尻を突き出すようにして、愛液でぐっしょりと濡れた秘部を壁のペ○スに押し付けた。
「あっ……」
ペ○スの先が少し当たっただけで体中に快感が響き渡り、胸いっぱいに幸せが広がる。
「大丈夫っ?」
男が心配そうに言った。
「大丈夫です、ただ、気持ちよかっただけです……」
「あ、そっか……うん……」
「力入れますね……痛かったら、言ってくださいね」
「はは……なんかそれ、男が言うセリフっぽい」
「あ……そうですね」
「やっぱ情けないわ……」
「そんなことないですよ」
雪子はそう言うと、小さな声で続けた。
「だけど、もし、またこういうことする機会があったら……今度は言ってもらいたいな……」
「え?」
男が聞き返したが、それにはかまわず、雪子は体に力を込め、自分の中に男のペ○スをうずめていった。
「あっ……んっ……」
ペ○スが奥まで到達すると、猛烈な快感が体を貫く。
あまりの快感に、雪子は震えた。
「すごい……気持ちいぃ……すごいよぉ……」
雪子は少しずつ、腰を動かしはじめた。
体が勝手に動いてしまうのだ。
その動きは、更なる快感を求め、どんどん激しくなっていく。
「あぁっ、あっ、奥までズンズンくるぅっ……後ろからっ……すごいよぉっ……」
「俺もっ……気持ちいいよ……すごい……激しくて……すぐイッちゃいそうだ……」
「あうっ……んっ、うれしっ……わたしで……イッて欲しいっ……」
雪子は更に激しく腰を動かした。
ほおが紅潮し、目がうつろになっている。
もうすっかり、快感の虜になっているのだ。
「はぁんっ、あんっ、おち○ちんすごいっ……しあわせぇっ……大好きぃ……」
腰の動きに合わせて、あふれ出した愛液が卑猥な音を立てる。
「はぁっ、はぁっ……うっ、あぁっ、イクっ……イクよっ、もう……っ」
男が差し迫った声を上げた。
雪子は、男のペ○スが自分の中で張りつめるのを感じると、自身も、押し寄せる大きな快感の波を受け入れた。
「ひあっ……わたしも……イッちゃうっ……あっ、イクっ、あぁっ、あはぁあああんっ!」
絶頂に達した雪子は、シーツを握りしめ、壁に尻を押し付けたまま、ビクビクと体を痙攣させた。
同時に、男も絶頂に達していた。
男の精液が注ぎ込まれるのを感じ、雪子は涙の混じった声を上げた。

男は無事、壁からペ○スを抜くことに成功した。
「あぁ、よかった。本当にどうも……ありがとう」
壁の向こうで男が言った。
「いえ、そんな……」
雪子は乱れた服を引き寄せながら答えた。
「えっと……この穴……大家さんに連絡しないとですよね」
雪子は遠慮がちに穴を見ながら言った。
穴の向こうに男の姿は見えない。
「そ、そうだね……あ……とりあえずこっち側から、紙とテープで塞ぐね、応急処置ってことで……」
なにかを探すような音が聞こえる。
男が紙とテープを探しているのだろう。
雪子は、切なさと、胸の痛みに耐えていた。
男は助けが必要だった。
ただ、それだけのこと──
「あった、今、貼るから……」
男が穴の前に戻ってきた。
穴に紙があてがわれる。
二人の間に通じた道が、塞がれようとしていた。
(夢なんか見ちゃダメ……忘れるのよ……)
雪子は、辛い気持ちを封じ込めるように、目を閉じた。
しかし──いつまでたってもテープを貼付ける気配がない。
雪子は目を開け、男に声をかけた。
「あの……?」
すると、男は穴にあてがっていた紙をはずし、言った。
「さっきの話なんだけど……俺、本気だったっていうか……」
「え……」
「どう……かな? 一緒にお茶、なんて……そ、そうだ、お礼もしたいし」
「あ……」
「べっ、別にっ、嫌なら無理しなくていいんだ……もしよかったらってことで……決して、変なこと考えてないし……や、やっぱり、怖いかな……見ず知らずの男にこんなこと言われても……」
「いえ、あの……」
雪子はうれしさのあまり目に涙をいっぱいためていた。
「ぜひ……行きたいです……お茶……」
「ホントに!? やった……」
「わたしも、うれしいです……このままお別れなんて、嫌だったから……」
雪子の目から涙がこぼれる。
「あ……じゃ、じゃあ……もう一つの方も……期待していいのかなっ……あの──」
男は夢中になるあまり、壁の穴に耳を付けて話している。
雪子はたまらなくなり、男の耳にキスをした。
「えっ……あ……」
男の声が止まる。
雪子は言った。
「もちろんです……わたしも……抱きしめて欲しいと思ってますから……」
「やった……あぁっ、すごい……うれしいよ……!」
男の耳には、まだ、雪子の唇が触れている。
男はくるりと向きを変え、雪子の唇にキスをした。
「んっ……えへ……」
雪子はよろこんで、それを受け入れたのだった。

おわり