マラ様

マラ様のイケニエになってはいけない。
心が壊れるほど激しく犯されてしまうから…
《読了時間の目安:12分》

昼休み。
ナツミ、アキナ、ハルコ、フユメの四人は、ひとつの机を囲んでいた。
彼女たちは今、世間で流行っている《マラ様》をやろうとしているところなのだ。
マラ様というのは、ひとことで言ってしまえば、《こっくりさん》である。やり方も、やる事も、ほとんどこっくりさんと同じ。
ただ、少しだけ違う部分がある。それは、《イケニエ役》が必要であるという事だ。
イケニエが気に入らないとマラ様は降りてこないため、こっくりさんより成功率が低い──というのが、もっぱらの噂だった。
「それで……イケニエはどうする……?」
アキナが、遠慮がちに言った。イケニエは危険だという噂があるのだ。
すると、ナツミが元気に言った。
「それなら、わたしがやるよ」
「えっ、ナツミ、怖くないの?」
ナツミ以外の三人は、心配そうな顔でナツミに注目した。
しかしナツミは、余裕の表情だ。
「平気だよ。ルールを守って、ちゃんとやれば大丈夫なんだから。そのかわり、みんな、なにがあっても最後までちゃんとやるって約束してよね!」
「もちろん、絶対ちゃんとやるよ!」
四人は、真剣な表情でうなずきあった。
「それじゃあ、イケニエの印をわたしの前にしてと……」
ナツミは机の上にある紙をまわした。
紙には、《はい》《いいえ》《鳥居》《男》《女》《五十音表》そして、《イケニエの印》が書かれている。
「これでよし。じゃ、はじめよ!」
「うん」
四人は紙の上に置いた十円玉に指を乗せると、呼吸を合わせてつぶやいた。
「マラ様、マラ様、おいでください……」
しかし、十円玉は動かない。
すると、ハルコが言った。
「もう一回やってみましょ。せーの」
「マラ様、マラ様、おいでください」
四人は再び、声を合わせてつぶやいた。
しかしやはり、十円玉は動かなかった。
「あはっ……ダメだね」
ナツミが言うと、張りつめていた空気が一気にほぐれた。
「やっぱり、こんなのインチキなんだよー」
アキナが言うと、ハルコが反論した。
「そうかしら。もしかして、イケニエが気に入らなかったんじゃない? ナツミは元気すぎるもの」
「ちょ、なによそれ! 元気すぎるってどういう意味よっ」
ナツミがわざとらしく拳を振り上げる。
「わっ、ナツミが怒ったーっ」
「あははっ……でもさ、真面目な話、イケニエって言ったらもっと──女の子らしいっていうか、清楚な感じの方がいいんじゃない?」
ハルコは言った。
「どうせわたしは女の子らしくないわよっ」
「まあまあ、ナツミはそこが魅力なんだからさ。ナツミみたいなのがタイプの男もいるよ……それはさておき、イケニエ変えて、もう一回やってみない?」
「いいねー!」
「じゃあ、次のイケニエは?」
「そりゃ、もちろん……ねえ」
ナツミ、アキナ、ハルコ、三人の視線が同じ人物に向けられる。
「え……わ、わたしっ?」
ずっと黙ってニコニコしていたフユメは、驚いたように言った。
「だって、この中でフユメが一番女の子らしいもん。ねえ?」
ハルコが言うと、ナツミとアキナはウンウンとうなずいた。
「どう? もちろん、無理にとは言わないけど」
「それは、別にいいけど……」
「やった! そうこなくっちゃ。じゃあ早速……」
ハルコは、イケニエの印がフユメの前になるように紙をまわした。
「でも、わたしでもダメだと思うよぉ……」
「ま、とにかくやってみようよ。それじゃあみんな、準備はいい? いくわよ、せーの」
「マラ様、マラ様、おいでください……」
「あっ!」
アキナが声を上げた。
十円玉が紙の上を滑り、鳥居の位置まで動いたのだ。
「アキナ、落ち着いて。みんなも、指を離しちゃダメよ」
「すごいじゃん、これマジ? マジだよね?」
「ねっ、質問! 質問してみようよ!」
「そうね、それじゃあ──」
四人は、マラ様に質問をはじめた。
恋だのテストだの、どうでもいい質問だらけだったが、四人はおおいに盛り上がった。
「次の質問は?」
「うーん、わたしはもう満足かな」
「わたしも、もういいや。フユメは?」
「うん、わたしは……あ、そうだ」
フユメは思い出したように言った。
「ん?」
「あの……イケニエってなんなのか……イケニエがどうなるのか聞きたいかも……」
「あぁー、なるほどぉ」
「じゃあ、聞いてみましょ。フユメ、質問して」
「うん……それじゃあ……マラ様、マラ様……イケニエはどうなるのでしょうか……」
フユメが質問すると、十円玉が動き出した。
「せ……」
「い……」
「こ……」
「う……」
「す……」
「る……」
「……止まったみたい。せ、い、こ、う、す、る、だって。どゆこと?」
「せいこうする……ってことは……そりゃ、成功するってことじゃない? 大成功!」
「そうね、イケニエは成功するってことよ。嫌な役割を引き受けたご褒美かもしれないわ。ありそうじゃない、そういうの」
「へーっ、そっかぁ。フユメ、やったじゃん!」
「えへ……ほんとかなぁ……えへへ……」
フユメはうれしそうにはにかんだ。
「それじゃあ、他に質問はある? もう終わりでいい?」
ハルコが言うと、三人はうなずいた。
四人はマラ様のルール通り、マラ様にお礼を言い、マラ様をきちんと終了させたのである。

その日の夜、フユメは眠りにつこうとするベッドの上で、マラ様の事を思い返していた。
しかし、肝心の、質問の内容はほとんど思い出せない。
(あは、まあいっか……)
フユメは笑みを浮かべた。
所詮、占い遊び。みんなで楽しめたのだから、それでいいのだ。
ただ、最後の質問の事は、よく覚えていた。
(イケニエは成功する……なんて、本当ならうれしいけど)
フユメは寝返りをうった。
なんだか今日は、寝付けない。
空気が体にまとわりつくような、妙な感じがするのだ。
(なにっ……?)
ふと、部屋の中に気配を感じ、フユメは体をこわばらせた。
なにかいる。それも、人間ではない、得体の知れないモノが──根拠はないのだが、本能的にそう感じるのだ。
フユメは息をひそめ、耳を澄ました。
ズルッ、ズルッと、なにかを引きずるような音がする。それに、鈴の音だろうか──エコーのかかったようなその音は、フユメに向かって、どんどん近づいてくるようだった。
(ううっ、なんなのよぉ……)
フユメは泣きそうな表情を浮かべながら、じりじりと顔の向きを変え、音のする方を見た。
(えっ……なっ、なに……!?)
フユメは息をのんだ。
フユメの足元、ベッドの向こうの壁に、大きな穴が開いていたのだ。
穴と言っても、壁が壊れたような現実味のある穴ではない。もっとぼんやりとした──霊界の入り口というような感じの穴だ。
穴の中は、濃い霧に満ちていた。
霧は、穴の向こうから射すピンクがかった光を受けて、幻想的に輝いている。
相変わらず、なにかを引きずるような音と鈴の音が、近づいてきていた。
やがて、霧の中に巨大な影が浮かび、《それ》は姿を現した。
「あ……あう……っ……」
フユメはあまりの恐怖に、息を詰まらせた。
体が、自分でもびっくりするほどガタガタと震える。
霧の中から現れたのは、化け物だった。それも──《巨大な男性器の形をした化け物》だったのだ。
根元の方にいびつな形の手足が生えていて、それで這うように移動している。そのときに、巨大な睾丸に見えるものを引きずるため、動く度にズルッ、ズルッという音がするのだ。
また、手足の位置から見て胴体に当たる部分には、すり切れた布が巻き付いていた。
よく見ると、それがボロボロの着物だという事がわかる。
姿を現した化け物は、フユメの足元で歩みを止めた。同時に、鈴の音も止まる。
フユメは、必死に体を動かし、後ずさった。
しかし、体が思うように動かず、いくらも逃げられない。
化け物はじっと動かず、顔はないが、そんなフユメを見下ろしているようだった。
その時、フユメはふと思い当たり、化け物を見上げてつぶやいた。
「まさか……マラ様……?」
すると、化け物は返事をするかのように動き出し、フユメの上に覆いかぶさった。
フユメの言ったとおり、化け物はマラ様だった。
マラ様は、《マラオトコ》という名の妖怪であり、イケニエであるフユメと交わるためにやってきたのだ。
「イケニエはどうなるのか」という質問に対する答えの「せいこうする」というのは、《成功》ではなく《性交》のことだったのである。
フユメに覆いかぶさったマラオトコは、フユメのパジャマに手をかけ、一気に引き裂くと、あらわになった白い乳房を乱暴にもみしだいた。
「ふっ……うぐっ……」
フユメはあまりの恐怖に抵抗する事もできず、ただただ、震えながら、苦しげな声をもらした。
と、その時、マラオトコの肉棒のような体に裂け目が現れた。
それは、マラオトコの口だった。目や鼻はないが、口はあったのだ。
マラオトコは大きく裂けた口から長い舌を出すと、フユメのやわらかな乳房をなめ回し、器用に動く舌先で乳首をつかむようにして締め付けた。
「あっ……んっ、あうっ……」
フユメは体がしびれるような快感に、困惑した。
(こんなに変な事をされているのに……)
性的な快感は、まだ性交に関する知識の少ないフユメには理解しがたい事だったのだ。
マラオトコはフユメの快感を引き出すように乳房をもみながら、今度は長い舌をフユメの口へ進めた。
「んっ……!」
もちろん、フユメは固く口を閉じた。
しかし、マラオトコの舌は力強く、簡単にフユメの唇をこじ開けてしまう。
「はむっ、あうっ、はがぁっ……」
フユメの口の中に、マラオトコの生暖かい舌が入っていく。
フユメは恐ろしくて歯をたてる気にもなれず、ひたすら耐えるしかなかった。
(いやぁ……気持ち悪いよぉっ……)
ところが、不思議な事に、これもだんだん気持ちよくなってきたのだ。
フユメは混乱した。
(どうして……こんなのが気持ちいいなんて……)
やがてマラオトコは、フユメのパジャマのズボンと下着を引きはがすように脱がすと、片方の手をフユメの股の方に伸ばした。
「ああっ──!」
フユメの体が跳ねるように反応した。
マラオトコの指が、フユメの秘部をなでたのだ。

フユメの秘部からはすでに大量の愛液があふれ出していて、マラオトコの指はヌルヌルとよく滑った。
「あっ、ああっ……やぁっ……あはぁんっ!」
フユメはあまりの快感に、声を上げずにはいられなかった。
それは、同じ家の中で寝ている家族に聞こえてしまうほどの声だったが──幸か不幸か、家族にはなにも聞こえていなかった。
不思議な霧に包まれ、フユメはいつの間にか現実と重なった別の次元に存在していたのだ。
「ひゃあっ、あっ、だめぇっ、いやっ、いやぁっ……!」
フユメは身を反らし、激しく反応した。
マラオトコが、フユメの秘部に指を入れたのだ。
「ひぐっ、あっ、はぁんっ、マラ様ぁっ、マラ様ぁあああ!」
フユメは泣きながら叫び、生まれてはじめての絶頂に達した。
「はぁっ、はぁっ、マラ様ぁ……」
フユメはぐったりとした体をビクビクと痙攣させながら、うっとりとした目で、マラオトコを見上げていた。
すっかり、快感の虜になってしまったのだ。
マラオトコはそんなフユメの足を広げた。
秘部が丸出しで、普通なら恥ずかしくてできないような格好である。しかし、絶頂に達し、快感に包まれているフユメは、されるがまま、全く抵抗しなかった。
あらわになったフユメの秘部は、興奮のため充血し、あふれ出した愛液にまみれてテラテラと光っていた。
マラオトコはそこに、熱くたぎる肉棒を押し当てた。
もちろん、頭部を押し当てたわけではない。巨大な男性器の姿をしたマラオトコだが、ちゃんとその股間に、挿入するための肉棒も持っているのだ。といっても、挿入用の方もかなりの大きさである。
マラオトコは力を込め、ゆっくりと、その肉棒をフユメの中にうずめていった。
フユメにとって、それははじめての挿入だったが、マラオトコの体液が痛み止めの役割を果たすため、全く痛みを感じる事はなかった。
フユメの体には大きすぎるように思える肉棒を、マラオトコは無理矢理、根元までねじ込んでいった。
「あっ、がぁっ……」
許容範囲を超える大きさの肉棒をねじ込まれたフユメは、その表情を強ばらせ、苦しげにあえいでいた。
あまりのショックに体が震え、焦点が合わず、意識がもうろうとする。
強すぎるその快感は、フユメの体が受け止めきれる感覚の限界を超えていたのだ。
(やだ……怖いよ……こんなの、死んじゃう……)
快感も強すぎると、恐ろしい感覚と化すのだ。
しかし、快感はまだ最終段階ではなかった。マラオトコが動き出すと、さらなる快感がフユメを襲ったのだ。
「ああっ、いやぁっ、だめぇっ、やめてぇっ……!」
フユメは叫んだが、マラオトコは止まらない。
ズチュッ、ズチュッ、と音を立て、強く、深く、何度も、何度も、フユメを貫く。
マラオトコも気持ちがいいのか、口をだらしなく開け、長い舌をだらりと垂らしていた。
「やだっ、あっ、あはぁあっ────」
と、その瞬間、フユメは白目を剥いて気を失ってしまった。
やはり、激しすぎる快感に体が耐えきれなかったのだ。
しかし、マラオトコが強く突き刺すと、その衝撃ですぐに目を覚ました。
「はぁっ、ぐっ、ひあぁっ────!」
ところがまた、受け止めきれないほどの快感に気を失ってしまい──何度もそれを繰り返した。
しばらくすると、なんとか意識を保てるようにはなったが、今度は、猛烈な快感に心の方が耐えられそうになかった。
「いやぁっ、らめ、ひゃめてぇっ……もぉっ……ゆるひてぇっ……ほあえうぅ! あひぃっ……まらひゃまぁっ、まらひゃまぁっ──!」
フユメは悲痛な叫び声を上げたが、それはマラオトコを悦ばせただけだった。
マラオトコはその身を興奮に震わせ、体を弓なりにして叫ぶフユメの腰を両手でつかんだ。
マラオトコの大きな手と比べると、フユメの体はとても小さく華奢で、まるで人形のように見える。
マラオトコは激しく動き続け、やがて、差し迫った動きを見せた。絶頂が近かった。
「ああっ、ひゃはぁっ、まらひゃまぁっ、くるぅっ、しゅごいのきひゃうよぉ────っ!」
フユメは絶頂に達し、体を激しく痙攣させた。
同時に、マラオトコも絶頂に達した。
フユメの体が壊れてしまいそうなほど強く、奥深くに肉棒を突き刺し、大量の精液を放出する。
マラオトコは長い間、ドクドクとフユメの中に精液を注ぎ続けた。
肉棒が突き刺さったフユメの秘部からは、その間ずっと、多すぎて受け止めきれない白濁液が、ブピュッ、ブピュッと恥ずかしい音を立てながらあふれ続けていた。
しかし、フユメは恥ずかしい思いをしないですんだ。
なぜなら、フユメの心はもう、壊れてしまっていたのだ。
最後の絶頂に達したその時、フユメの心はガラスが割れるような感覚と共に、砕け散った。
フユメの瞳は光を失い、うつろだった。
しかし、笑みを浮かべたその表情は、とてもしあわせそうに見えた。

その後、フユメが学校に戻る事はなかった。
さらに、ナツミ、アキナ、ハルコの三人も、その事を気に病み、学校から遠ざかっていった。
それからほどなくして、学校は《マラ様》を禁止したという……。

おわり